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隣家からのもらい火で実家が全焼してしまった大切な人を、みんなで支援する方法
― MOVのコミュニティで実際に起こった話
わたしたちの大切な仲間である堀池真希(ほりいけ まき)さんは、今年1月、隣家からのもらい火でご実家が全焼するという事件に見舞われました。幸い家族みなさんご無事でしたが、着のみ着のままで避難され、スマートフォンと財布以外のほぼすべてが焼けてしまったのです。
事件の当事者であり、離れて暮らす家族の支援者でもある真希さんは、経験してはじめて、火事後の生活を再建するための情報がほぼ出回っていないことを知りました。周囲の協力もあり、なんとか自力で事後処理をやり遂げた真希さんがいま思うことは、「この経験を未来の誰かに役立てたい」ということ。
そこで、自身の経験をnoteで公開しはじめました。綴られているのは、必要な手続き、支援の募り方、心の持ちようなど、リアルで再現性の高い情報ばかり。今回は特に、どちらの立場でも幅広く活用いただけそうな【支援】にスポットをあて、個人で支援を募る際のコツ、コミュニティでできることなどについて伺います。いざというとき、どなたかの参考になりますように...!
火事に関する当事者からの情報発信は少ない
知らせを聞いてほんとうにびっくりしたと思うのだけど...。
朝起きたらスマホに何度も着信があって、かけ直したら「家が火事で全焼した」と。急に想定外のことをいわれて、思考がストップした感じでした。「どういうこと?」って。そこから徐々に頭を整理して、これは応援に行った方がいいなと思ったんです。
noteにあった『実家全焼からの時系列』について、情報はどうやってまとめていったの?
愛媛に向かっている時に、夫が参考になりそうな記事のリンクをいくつか送ってくれました。同時にFacebookにも事件のことを投稿してくれて。コメント欄で火事にあった方のコラムを教えてくださった方もいて、それらを見ながら火事後の手続きについて情報を集めていった感じです。
たぶん、火事に遭ったことって言い出しにくいのかもしれませんね。自分の過失だったり、その後の手続きに追われて情報をまとめるのが難しかったり。とにかく情報が散在しているんですよね。
なにはなくとも火災保険
ご実家は火災保険に入っていなかったそうで...。
そうなんです。住み手のいなくなった親戚所有の家を、管理も含めて間借りしていたので、火災保険に加入していなかったんですね。
その場合、どんな費用が必要になってくるの?
基本的に火が消えてからのこと、具体的には解体とゴミ出しは自分たちでやらないといけない。解体は業者にお願いするのですが、焼けた場合はダイオキシンなどの有害ガスが発生しているので特殊清掃扱いになり、通常の解体費用の1.3〜1.5倍するらしいです。地域によっては、集めたゴミの回収費用は補助金で賄えたりするそうですが、火災保険はほんとに大切!って思いました。
できる人ができることで
実際に受けられた支援について教えてださい、たとえばすぐに役立つものとか。
食料と衣服がありがたかったです。食事については、今回の避難したところは調理器具も食器もなかったので、おにぎりとか片手でつまめるものがありがたかった。でもこれは避難場所の環境によると思うので、直接聞いてみるのがいいと思います。
次の生活がどうなるかによって必要なものは変わってくるので、とりあえず靴下とか下着みたいな生活必需品はあると便利ですね。家族の中に赤ちゃんもいたので、サイズアウトしちゃった服とかもありがたかったです。
こうするといいかもっていうアドバイスはある?
これがベスト!というよりは、自分のできることを考えて、こんなことだよと具体的に提案してくれるのがありがたかったですね。飲食店の方で「うちの商品を送りたい」とか、「冷凍でよかったら余っているお肉を送るよ」とか、「会社の会議室が空いてるから仕事に使ってね」とか。家族を見ていても「これお願いします」って言いやすいのかなと思いました。
個人で支援を募るなら
実はわたしたちも、どうやって遠隔で支援できるか考えて、仲間の一人が光の速さでクラウドファンディングを立ち上げたんだけど...申請が通らなかったんだよね。
いまアメリカに住んでいる元上司も「こういう時はクラファンだろう!しないの?」って連絡をくれたんだけど。日本では社会性が低いと審査を通すのが難しいみたいですよね。個人で成功している例だと、地域で40年愛されている飲食店、とか。なので、何も言わずにAmazonやLINEのギフト券を送ってくださった方もいました。海外からはPayPal経由とか。
お見舞い金の申し出がたくさん届いて、真希さん自身もいろいろ検討されていたけど、最終的にたどりついたのは?
当事者の銀行口座を、お見舞い金の窓口にすることです。今回は母です。これなら譲渡するときも税金や手数料がかからないし、必要なときにすぐに使える。国税庁と銀行にも電話で確認して、なにも問題なかったので、個人として動く場合はこれがおすすめです。
あとは今回初めて活用した、Amazonのほしい物リストの公開。必要な物を明確に示せるし、支援する側にも選んでいただけるので、すごくいい機能だなと思いました。
コミュニティこそ最大の防災
状況の発信は主にFacebookでしていたよね。情報の広がり方で印象に残ったことはある?
「家を探しています!」という投稿をして一番最初に連絡をくださったのが、実はMOVメンバーさんでした。「その地域に知り合いの経営者がいるので聞いてみます」と。それから、過去に愛媛への移住経験がある方は「市の移住課の方を紹介しましょうか」とか、「昔の知り合いが市役所で働いているので聞いてみるね」とか続々。
心強いね!普段からSNSで発信しておくことも大切だね。
そうですね。そうしているうちに(地元は狭いので)どこに行っても、「火事にあった堀池さんですね」って有名になっていて。笑。市長さんも「各部署に対応を確認済みなので、ご安心ください」という連絡をくださったんです。自分でアクセスするより話がスムーズなので、ご紹介やシェアもほんとにありがたかったです。
市長さんをも動かす!繋がりの力ってすごい。
それもいってみたらMOVの強みですよね。いろんなプロの方がいるじゃないですか、各ジャンルで。こんなふうに経営者同士が繋がっている場ってそんなにないし。そういう方がシェアしてくださったおかげで、知らない方からも含め予想を遥かに上回るご支援をいただいて。MOV関係の方が全体の40%にもなっていたんですよ!
コワーキングは仕事をする場だけど、普段から個人間での繋がりを大切にしている方たちが多いよね。もちろん日頃から真希さんが誠実にみなさんと向き合っているからということもある。
お母さんや妹をみていても、火事になった後、ものすごく周りの方に助けていただいていたんですよ。職場の方や子どもの学校の方、いろんな方が来て。だから、日常的なコミュニケーションをちゃんと大切にしておくことが最大の防災に繋がるなって思いました。
火災保険に入るのも大切だし、いろいろ準備するのも大切だけど、日々の人間関係こそ大切にしようって、すごく思っています。
この経験をどうプラスに捉えるか
それにしても、試練は乗り越えられる人に与えられるとはいうけれど。真希さんはまさしくだね。
ひとつだけ、最初に支援に向かうときから思ってたのは、どうしたらこの経験をプラスにできるのだろうということ。きっとすべて失ってすごい悲しいだろうけど、どこかで実体験をシェアできたら、誰かの何かの知恵になるだろうと思ったんです。似たようなことは起こってほしくないですけど。
知らないだけで、火事ってけっこう起きているそうですね。
そうなんです。1日あたり平均で99件(総務省消防庁の消防統計より)も起きてるそうです。なのでぜひ、noteの記事をガイドブックにして、防災用品のなかに入れてもらいたいと思っていて。できれば自分でも書き込めるノート式のものがいいと思うので、コクヨさん(MOVの運営会社)!Campusノートとのコラボとかどうでしょうか??