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精神的にも経済的にもバランスを取るため、ITから農業まで複数会社を経営
株式会社natowa 千田弘和 - MOVの100人インタビュー

--まずは簡単な自己紹介をお願いします。
千田弘和(ちだ・ひろかず)です。企業で10年ほどSEをしていて、2010年に起業しました。今、主に関わっている事業は4つです。
1つは株式会社WILBYが運営するウェブメディア「SAKIDORI」の事業。会社自体はビックカメラに売却しましたが、今も関わってはいます。
2つ目は共同代表取締役を務める株式会社canonicaで、ウェブ招待状サービスを中心にブライダル業界のDXを行う事業「Weddingday」。
3つ目は、20年ほど住んでいる世田谷区三軒茶屋でのコワーキングスペース「三茶WORK」の運営で、これは有志で設立した三茶ワークカンパニー株式会社の事業。
そして4つ目は、株式会社natowaの、3つの飲食店を運営する事業です。
--起業の経緯と最初の事業について教えてください。

高校まで青森市で育ち、大学は仙台です。
アルバイト先の飲食店で大学卒業後も働き続けたいと考えていたところ、尊敬していた運営会社の社長に「いったん就職しなさい」と言われ、とりあえず選んだのがIT系でした。
1、2年で辞めるつもりがいつの間にか8年ほど経ち、「あれ、そういえばいつ辞めよう」と思い始めたとき、以前からつながりがあった仲間と話がまとまり、2010年に農業系で会社を設立することにしたのです。
農業を選んだのは、IT系の仕事はバーチャルすぎて、ビジネスの手触りがないと感じていたからでした。
田舎に帰ると自然も食も豊かだけど、仕事が無くて元気がない人が多い。一方で東京にいると、仕事は忙しいけど、豊かな自然や食が身近になく、疲弊している人が多い。
短絡的ですが、もっと食や農業を中心に経済がまわると、バランスが良くなるのではと考えたことがきっかけでした。世田谷区内で農業ビジネススクールを行ったりする中で、三軒茶屋の八百屋「三茶ファーム」も開店し、MOVに来たのはこの頃です。
八百屋は2023年に閉店して、今度は食べられるところまでやろうと、同じ三軒茶屋に「やおやのファミリーレストラン」をオープンしています。自由が丘や神楽坂にも同じようなコンセプトの店舗があります。
--なぜ複数の事業をすることになったのですか?

2010年に農業の事業を始めた直後に東日本大震災が起き、東日本の野菜をメインに扱っていたので大打撃を受けました。つながった生産者さんの多くが苦労していたので、私も歯を食いしばって働き詰めていましたね。
ギリギリで食いつないでいたときに友人と「IT系はIT系で経験を活かして別に事業をしよう」と決まり、2014年のウェブメディア立ち上げに至ったのです。
その頃からずっとコワーキングスペースはやりたいと思っていましたが、自分1人で設立するほどの情熱はありませんでした。
2019年にちょうど三軒茶屋に引っ越してきた友人がいて、吞みの席で一緒にやろうと盛り上がり、そういう場が欲しいという人が10人以上集まって立ち上げたのです。MOVを利用して、コワーキングスペースになじみが深まっていたのも、背景にありますね。
今では地元の人を中心に集まる場をつくりつつ、世田谷区との協働で起業家スクールや補助金関係の事業をしたり、マーケット運営をしたりと、幅広い活動をしています。
--多彩な事業を並行して経営するのは、実際どうですか?
精神的にも経済的にも、バランスが取れるのは良いと感じています。
ビジネスの手触りというところから農業系、飲食店をしていますが、IT系の方が儲かりやすいのも確かですよね。リアルビジネスとバーチャルビジネスを両方運営することは、健全に思えます。
実は今もレストランでは月に何回か、シフトが入っているんです。調理もできますが、ホールが多いですね。そうやってリアルに働くのが好きなんですよね。現場に立つことで改善点も人間関係も見えて、運営上でも大事だなと感じます。
--これまでに最も苦労したのはいつですか?

社会人1年目に、精神面で体調を崩したときです。学生から社会人へ急激に環境が変わって、懸命に取り組むうちに気づかず心が折れてしまいました。特にひどかった半年ほどは、それまでの人生では理解できなかった「死んだ方が楽だ」という気持ちを毎日経験しましたね。
それでもいろいろな人の話を聞いて、似たような経験をする人は珍しくないと知って少し気持ちが楽になり、数年かけて回復することができました。
自分との付き合い方を学び、人にも優しくなれて、振り返ればいい経験になったと思います。
--ご趣味は何ですか?
強いて言えばキャンプです。でも、もし仕事も趣味に含めて良いなら、仕事が趣味ですね。
飲食店の仕事も好きですし、開発も好きです。キャンプに行く時間も、もくもくと開発する時間や畑を借りて農業に携わる時間もほしいですが、なかなか実現しません。
飲食店をどうしたら単体で黒字化できるのかも、1つの事業だけに全力投球ができない状況で、とても難しいと感じます。
やりたいことが多すぎて、全部楽しいのですが、忙しすぎていっぱいいっぱいです。今後どうするかは、今の悩みですね。
稼ぎたい欲求はあまり大きい方ではありませんが、健全に運営するために、事業に必要なお金を稼ぐことも大事。たくさん稼いでたくさん雇ってたくさん払っていくのが、最大の社会貢献ですよね。
--MOVでどんな人とつながりたいですか?

もっといろいろな人を知りたいです。単なる業務委託ではなくて、一緒に何か新しいことを始められる場であることが、コワーキングスペースの最大の強みですよね。
でも、新しい事業の話ができるのは、個人の関係があってこそです。知らない人といきなり協業の話はできない。最初の情報を得る段階をどうフレームワーク化するかについては、三茶WORKもMOVも同じ課題を抱えていると感じています。
まだ試験段階ですが、三茶WORKでは、ブレイクアウトのしくみに「仕事以外の、人としてのつながりを大切にしたい」という発想を取り入れています。
仕事で来ている人たちだけれど、仕事だけではなくて、住まい、趣味、出身のような共通点を見つけて、最低限の情報でつながっておくのが、良い展開を導き出すコツだと思うのです。
三茶WORKの場合は地元の人が多いので住まいのつながりが初めから大きいですが、MOVは渋谷だからもっと難しい。AIが勝手にマッチングしてくれるようなしくみがあったら、面白いですね。
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