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日常着を最上の一着に

KEI代表取締役:對馬三宣さん ブランドマネージャー:増田智士さん インタビュー


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オーダーメイドのワイシャツを買える人、と聞くとどういった人物像が思い浮かぶだろうか。
量販店に行けば1,000円台で買えるワイシャツは、オーダーメイドになると途端に10倍ほどの値段になる。しかも、わざわざお店に出向いて採寸してもらうなど、時間も手間もかかる上に決して安くはなく、簡単に手を出せない。多くの人が、オーダーメイドに対してそんなイメージを抱く。

ただ、そのイメージを覆すようなブランドがインターネット上に存在している。自分の体に合ったカスタムオーダーシャツをインターネットで注文できるサービスを展開しているKEIだ。

今回は株式会社KEIの對馬さんと増田さんにサービスについて、またブランディングについてお話をうかがった。



モノづくりに徹底的にこだわる
KEIがやること・やらないこと


「褻(KE)の日に着る、最上の衣(I)」をテーマに、オーダーメイドシャツを4,980円から提供するKEI。誰でも簡単に採寸できる自動採寸システムと、好みにあわせて自由にデザインを選べるカスタムオーダーシステムを併せ持ち、オーダーメイドでありながらいつでもどこでも"PC"や"スマホ"で簡単に注文できる。しかも通常1万円以上はするカスタムオーダーシャツを、5,000円以下という破格の値段で提供しているにもかかわらず、手元に届くシャツの品質に妥協は全く見られない。素材や設計、縫製に至るまで、KEIはブランドとして、どれほどこだわっているのか。なぜこれほどの低価格を実現できているのか。對馬さんと増田さんは「モノづくりにおいて、かなり細かく"やること"を決めています」と言う。

僕らは自分たちのモノづくりの中で、「使うもの・使わないもの」、「やること・やらないこと」をはっきりと分けています。たとえば、プラスチックボタンは使わない。それは工業社会で安く作るための手段であって、愛着はほとんど感じられないと思ったから。だから貝ボタンを使う。丁寧に磨かれて、一つ一つくりぬかれた貝ボタンには、自然の美しさがあるよね、と。
それから、生地は綿100%にする。化学繊維は基本的に使わない。天然素材って本当にすばらしいと思っているから、綿100%でしか作りません。

縫製や設計の部分で言うと、ボタンはすべて手縫いですし、付け方は "鳥足掛け"や"根巻き"といったボタンの留め外しがしやすいようにしています。他には、隠しタックをつけることで、袖のダボつきをなくしたりしています。これは僕たち独自の発想で、他ではやらない設計なんです。服をよく知る人と一緒に作ったので、見た目のスマートさと動いた時の機能性を両立させることができるんです。

ミシンも、ものすごく細かく縫っていて、24運針といって、つまり3㎝間に24回針を通すっていうことなんです。一般的に高級シャツって言われているのが21運針。日本だとモノづくりをよく頑張っているブランドでも21運針なんで、それよりも細かいんです。

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品質の高い素材の産地を自分たちで訪ね、価格交渉を行う。時には開発から携わることも。



さらに、最近では省かれがちなガゼットをあえてつけていたり、機械ではなく職人の手によって入れられるハンド刺繍のサービスをおこなったりと、歴史と伝統のあるディティールや手法を現代に復活させて取り入れることも積極的に行っている。ここまで徹底的にこだわってモノづくりを続けるには、普通ならコストがかかる。しかしKEIは、素材の産地をひとつひとつ訪ね、直接買付けることによって原価を確保。さらに、自社で工場を持つこと、実店舗を持たずインターネット上で受注を管理するなど、中間流通を限りなくなくすことで、流通にかかるコストをおさえ、他のブランドよりもモノづくりにコストをかけられる仕組みをしっかりと整えているのだ。なによりも良いものを手ごろな値段で届けたい。それが對馬さんと増田さんの原動力となっている。




KEIが当たり前として取り入れている
エコの考え方とは?


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自分の身体にジャストフィットした、しなやかで美しいフォルムのシャツ。動きやすさなどの機能性にも優れている。



KEIはなによりもストーリーを持ったいいモノを届けるとともに、着る人たちに伝えたいことがある。職人たちの丁寧で細やかな手仕事によってシャツが作られていること、つまり人が人のために作っているということだ。それを着る人に伝えることで、KEIのシャツはどういった意味を持つのだろうか。

僕らKEIは工業化した社会へのアンチテーゼがすごくあるんです。工業化社会っていうのは、作る側が誰のために何をつくっているのか分からないんですよね。着る側も誰が作ったのかも分からない。そこに存在する"人"は見えづらくて、合理性や価格だけを優先させてモノを作っている。だから愛着も生まれにくい。それはおかしいじゃないか、と。僕らは人が人のために作る服を作って、それを着るっていう社会になるといいと思っていて。例えば、僕らがハンド刺繍を入れるのも、そのぬくもりを伝えたいという意図があるから。着る人に、「これは人が作ってくれたものなんだ」って伝えることで、愛着を持って長く着続けてもらえるモノを作る。それは、僕らがとても意識している、僕らなりのエコな考え方とも言えます。

あとづけのように「受注生産です。大量生産していません。」というようなもっとエコにつながる言い方も出来る、と前置きをした上で對馬さんと増田さんが話してくれた、彼らなりのエコな考え方。それをしっかりと持ちながら、ブランドとして「エコであることを意識してモノづくりをしています」と主張はしていない。なぜなら、二人にとってのエコは、KEIのモノづくりの根底に秘められた熱い思いであり、大前提とされた当たり前のことだからだ。
KEIのシャツを買う人の中には、そこに気がついている方もいるかもしれない。気がついていなくても、エコの考え方が含まれたKEIのモノづくりのこだわりに魅力を感じているファンが多くいることは確かだろう。




世界で通用するブランドを目指す
KEIが企む、今後の展望


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シャツを着用したモデルは、一般人で国籍や体型、着ている場面もさまざまである。



KEIを立ち上げた当初から、「世界の人に通じるモノが作りたい」と考えていた對馬さんと増田さんにとって、カスタムオーダーシャツはぴったりのアイテムだった。いわゆるS.M.L といったサイズの既成概念にとらわれることなく、多種多様な人種、体格、体型に対応し、世界中の人が買うことができるからだ。

世界中の人が買うモノで、しかも5000円であれば、ほんとに、届けて喜んでくれる人がたくさんいると思うんですよ。僕らのサイトの中にいるモデルは肌の色もいろいろだし、すごく太った人もいる。どんな人だとしても、その多様性を受け入れられるサイトになっています。世界中の人にちゃんと使ってもらえる、かつ、世界中の人から注文が入るようなブランドであり、サービスであり、サイトであれたらいいな、と考えているからです。
       
今年の8月8日でブランド設立から一周年を迎えたKEI。しっかりとしたブランディングとモノづくりの基盤がすでに確保され、インターネット上のサービスはもちろん、定期的にポップアップショップを展開するなど着実にファンを増やしているように見える。今後は広告を出したり、プロモーションをかけたりしていくのかと思いきや、KEIはまだスタートラインにも立っていないと言う。

今やるべきことは、ブランドをもっととがらせること。KEIとはなにかをしっかり突き詰めること。そういうブランドとしてのアイデンティティみたいなものと、そこに共感してくれるファンができた上で、はじめてプロモーションをやっていけるかなと思っているので。モノづくりのレベルも、やっとこの1年、2年で、その土台ができそうだなというタイミングなんです。僕らは初めから広告は一切打っていません。というのは、広告を使ってブランドを作るには、相当なお金をかけないと無理だなと思っているから。それよりも、日本だけじゃなく海外でのポップアップショップの展開とか、KEI独自の活動・方法・アイディアでやっていきたいですね。
       
日本を飛び出し、世界を見据えている増田さんと對馬さんの口調は明るく楽しそうだ。KEIというブランドが、今後世界でどう展開されていくのかどんどん期待が膨らむ。



8月18日から8月29日までaiiima2にてKEIがこれまでに作ってきたオーダーシャツの展示と、採寸会がおこなわれます。採寸会で、素材の質感やデザインを確認した上で、その場でスタッフに採寸してもらい、そのデータを元に、KEIのサイトから注文すると、後日自宅へ自分が好きなデザインでサイズもピッタリなあなただけのシャツが届きます。この機会にKEIのシャツをお手元にいかがですか?