MOV
Channel
Channel
2019.04.01
でかい声を出していたら仕事がふえた ~遠慮なくでかい声仕事術 -- デイリーポータルZ 古賀及子
生まれもったものや、努力して(あるいは偶然に)得たもの。汎用性のあるものや、ニッチなもの。人間の能力にもいろいろありますが、今回ご紹介するのは、でかい声という能力です。
その能力の持ち主は、幼少期に兄弟五人でいった「いただきまーす」が、4軒先の友人宅まで響き渡ったというむかし話みたいなレジェンドを持つ、デイリーポータルZ編集者 古賀及子(こがちかこ)さん。
一般的には"うるさい"といわれがちだし、自分ですらネガティブに捉えていたというでかい声が、ここ3年ぐらいで、仕事をいただける能力になってきたのだそうです。今回はそんな古賀さんの仕事術をご紹介します。
*デイリーポータルZとは?
地味な仮装ほど讃えられる地味ハロウィンや、納豆を一万回混ぜたらどうなるか、セレブになるにはどうしたらいいかなど、身近でお金をかけない思いつきを試したりしながら、毎日記事を更新している、たのしいよみものサイトです。
2013年には、ショーケースaiiimaのオフィスを公開する企画「社会社見学」で、デイリーポータルZ移動編集部を開設。半年間ご利用いただきました。
地味な仮装ほど讃えられる地味ハロウィンや、納豆を一万回混ぜたらどうなるか、セレブになるにはどうしたらいいかなど、身近でお金をかけない思いつきを試したりしながら、毎日記事を更新している、たのしいよみものサイトです。
2013年には、ショーケースaiiimaのオフィスを公開する企画「社会社見学」で、デイリーポータルZ移動編集部を開設。半年間ご利用いただきました。
こんにちは~!(大声)
デイリーポータルZ編集部の古賀及子と申します。普段は編集をしたり、記事を書いて写真も撮ったりしてます。
みなさん、それぞれ自分の能力で仕事をしてらっしゃるかと思うんですが、今回は、私が、なぜでかい声で仕事をするのか、なぜそれが自信につながったのか、そして導き出した、でかい声を出す意義についてお話ししたいと思います。
でかい声で仕事するとは
⇒ なぜでかい声で仕事をするのか
短期大学の経営処理専攻というところを卒業しまして。持ってる資格は、自動車免許のみ。先月40歳になりまして、若くなくなって久しいですよね。かといって、ベテランというほどの立ち位置でもないわけで。学歴はそこそこ、資格もないし、若くもない。でも、運だけはやたらいいんですよ。ほんと。
デイリーポータルZに入ったのは2004年。いつも読んでいてすごい大好きだったんですよね。もともと暇な会社に勤めておりましたので、仕事中インターネットでデイリーポータルZを見れた、それがもう運がいい。で、こんな面白いサイトがあるのかと応募したらライターにしてもらえた。めちゃめちゃ運がいい。
さらに担当編集が林さん(デイリーポータルZウェブマスター林雄司さん)だった。林さんって、記事も書きますし、デカ顔みたいな工作もして海外とかいっちゃうし、プレーヤーとしてのイメージが強いかなと思うんですけど、編集者としてめちゃめちゃ面倒見がいいんですよ。できない子をものすごく伸ばしてくれるんです。その方が担当だったっていう、運のよさがありました。
林さんに出会ってはじめて、「声がデカいですね」って、誉め言葉だって教えられたんです。それまでわりと「うるさい」とかいわれて、シュンとしてしまうような人生だったんで。だから生きてきて、私にギリギリあったのが、でかい声だったんですね。でかい声を出して仕事をとるしかなかったんですよ。
でかい声で仕事を増やすとは
⇒ そんな需要あんのか。
でかい声が長所だとわかったものの、さて、どこで活かそうか。利点といえばまず、居酒屋注文がめちゃめちゃとおる。「すいませーん!」っていうと、ちゃんと来てもらえるので「古賀さん頼むよ」っていう感じが、いいなと。あとは、イベントとかでアナウンスしなければならないときに、マイクなしに「はい皆さん集まってくださーい!」「こっちでーす!」とか言うと、「お、いるな」って気がついてもらえる。でもこれぐらいでは、まだバリバリ仕事ができる感じがしない。
リアクションでかいね、みたいなところが最初にフィーチャーされたのが、2004年に書いた『嫌いな食べ物がほしい』という記事。「古賀さんいいね」みたいなことを、やっぱり林さんがいってくれて、このときに、なるほど、これって仕事だなって思ったんですよ。これで軌道に乗るかな、と思ったらうまく乗らず...。
で、ここからなんと10年くすぶるんです(笑)。急にブレイクスルーがきたのが2015年の『してみよう 拾い食い』という記事で。これ撮影がすごい面白かったんですね。面白くって、現場でただゲラゲラゲラゲラ笑ってたら「こんな大声で笑ってて面白い」とか「こんな豪傑見たことない」みたいなコメントをめちゃめちゃいただけて、すごい反響があったんです。これ企画して記事を書いたのライターの大北栄人くんで、私は撮影を楽しんで、ただ30分拾って落ちてるもの食べただけなのに、まじかこれはきたな、と。
さらにチャンスは続きます。2016年1月、なんでもレンジでチンする会を発足しました。今も隔週木曜日に新作を公開しています。
そして決定打が、べつやくれいさんの記事『リアクション上手になろう』。リアクションをとるだけの企画に呼んでいただきまして、とにかくでかい声を出していただけなんですけど、べつやくさんが「今日も素晴らしいリアクションを見せてもらった。最後にリアクションの極意を聞いた。声を出すことだ。」と書いてくださって。この記事も大変にウケまして、これで、でかい声を出すことは悪いことじゃないと気づいたんです。
ここからもう調子に乗りまくりました。ライターの西村まさゆきさんのイベント路線図ナイトや国語辞典ナイトに司会として呼んでいただいたんですね。そこでみんな大好き国語辞典編纂者の飯間浩明先生に、ほんとに評価していただいたんです。
すでに報道等で皆さまご案内のとおり、「今年の新語2018」の選考発表会と、辞書ファン驚愕随喜のイベント「国語辞典ナイト」を12月5日19:00から渋谷で行います。第1部発表会の司会が古賀及子さん(@eatmorecakes)というだけでも、そのテイストが分かるよな! みんな行こう!https://t.co/WWmD9GLdy3
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2018年11月7日
でかい声出してただけですよ?やっていることと言ったら。このあたりでようやく、これはもしかして、運がいいだけだじゃないな・・・?わたしのでかい声は完全に長所なんだなと。でかい声に自信が追いついた!自信に変わっちゃったんですよ。人間、欲しくてもなかなか手に入らないもの、それが自信じゃないですか?
今まで私、でかい声を出して生きてるだけだったんですよ。でもイベントの司会なんかをさせてもらっているうちに、でかい声を出すって、仕事なんだなということがわかって。需要があるのか、っていうクエスチョンの答えはある!だったんですよね。
なぜでかい声がよろこばれるのか
⇒ うるさい=ネガティブじゃないのか
昔は恥ずかしくて「声でかいね」ていわれたら「いや鼻炎なんです!」とか意味わかんない言い訳してたんです。でも声を出してみたら褒められた。もっと出したらもっと褒められて、人に迷惑かけることじゃないって、声を出していたからこそ分かった。短所を長所に言い換えるってあるじゃないですか。自己主張が弱い=でしゃばらない、とか。うるさい=誰とでもコミュニケーションがとれて社交的とか。怒りっぽい=熱意があるとか。でかい声=元気、完全にこれやんけ、と思いまして。
諸刃の剣でもあるんです。やっぱうるさいって感じる方もいらっしゃると思いますし、TPOを考えたら、たとえばもちろん図書館や電車では大騒ぎはしません。でも、仕事化したことでハンドリング可能になったんですよね。つまり、でかい声を出してるうちに、仕事になって、ネガティブじゃなくなるという超高スパイラルに入りまして。
息子がなんかへんな写真撮ってくれた。 pic.twitter.com/htT5W2td2J
— 古賀及子 (@eatmorecakes) 2018年8月24日
でかい声での仕事のやりかた
⇒ 一般的にも意義のある「でかい声」
ここまでかなり個人的な話になっちゃったんですが、お伝えしたいこととして、基本的に、人はとてもやさしい、というのがあります。でかい声を出して、なんかウェイウェイやってる人に対しては、しょうがないなって思ってくれるんです、ほんとに。 声を出すっていうのは、どっちかというと、受け手の皆さまのむねをかりて、「こんにちは古賀です!(大声)」っていわせてもらうことなんです。前に出てなにかやると、聞いてくださる。だからありがたく、遠慮なくでかい声を出してれば、みんなが受け入れてくれるんです。
しかも私の場合、でかい声を出しているうちに、まわりが盛り上げてくれるようになったんですよね。で、リアクション時の写真を逃さず撮ってくれる。これは編集部の橋田さんが撮ってくれたんですけど。
橋田さんとは10年以上の長い付き合いで、私の声がでかいこと、リアクションがうっとうしいことを、ほんとによくわかってくれていまして、こういう写真を執拗に撮ってくれる。でかい声っていうのは、出していくうちに、信頼関係がぐんぐん育つんです。
だから、ちょっと遠慮して、あんまり出しゃばらないようにしている方も、遠慮せずにバーンといってみるといいかもです。意外とみんなやさしさで受け止めてくれて、しかも周りのフォローもどんどんスキルアップして、うっとうしい良い写真をばんばん撮ってくれるようになる。そんな超・高循環なことが起きるよ、という奇跡のような、私のストーリーでした。
電話の声もでかいという古賀さん。先日、同じ場所で電話していた同僚の安藤さんを(でかい声で)蹴散らし、「勝った・・・!この電話ボックスエリア、私のなり!」と思ったそうです。
「後で謝ったんですけど。笑。でも安藤さんも付き合いが長いので『しょうがねぇな』と思ってくれるんです。」と、まさにでかい声がつくりあげた信頼関係の深さを物語るエピソードも披露されていました。
自分の能力に気づかせてくれて、その能力を認めてくれる、なんて素敵な職場...!一緒にお仕事したいというかたは、お問い合わせフォームから連絡するといいそうです。
そんな古賀さんのブログまばたきをする体には、古賀さんの日常が(意外にも?)静かに綴られているのですが、文章を構成するのに選ばれた言葉やその並びをみていると、「運がよくてライターになれた」なんて謙遜だ!ということがすごくよくわかります。こちらもぜひ。