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廃棄物から水素へ!世界を変えるゴミZEROプロジェクト
株式会社BIOTECHWORKS-H2 COO 仁谷美喜さんインタビュー!

廃棄物から水素エネルギーを生成して世界を変える!というプレゼンで、審査員やオーディエンスの心を掴み優勝された、BIOTECHWORKS-H2さん。ゴミがエネルギーになるという夢のようなプロジェクトについて伺っていきます。
仁谷さんが思い描く、世界を変えるビジネスとは?

世界を変える!ゴミZEROプロジェクト

この度は優勝おめでとうございます!簡単に自己紹介をお願いします。

はい、株式会社BIOTECHWORKS-H2の取締役COOをしております、仁谷美喜申します。
私たちの会社では「廃棄物から水素、水素から再生可能エネルギーへ」というテーマを掲げ、「ごみZEROプロジェクト」を推進しています。廃棄物を水素に変換し、その水素をエネルギーに変えて、地域の電力として活用する、そんな循環型社会を目指している会社です。

なぜこの事業に取り組もうと思われたのですか?

元々はアパレル業界出身で、生地開発を行っており、GAPやZARA、H&Mなどに供給していました。しかし、アパレル業界はサステナブルに最も遠い業界とも言われています。複合素材・金属部品などが混在しており、リサイクルが困難なんです。
加えて、中古販売ができるのはごく一部で、多くの服が廃棄・焼却されています。それならば「業界の内側では解決できない課題を、まったく新しいアプローチで解決できないか?」と考えたのがきっかけです。

廃棄物から水素を取り出す...技術的に難しいのではないですか?

おっしゃる通り、非常に難しいです。たとえば、特定の綺麗な廃棄物からであれば水素抽出は可能ですが、混合ごみのように成分が不明瞭なものから水素を抽出するのは、これまで困難とされてきました。しかも、この分野には大手企業が多く参入していて、私たちのようなスタートアップが入り込むのはハードルが高い。
それで私たちは「前処理工程」というブルーオーシャンに着目しました。そこならまだ参入余地があるし、社会的意義も大きいと考えたのです。

前処理というのは、具体的にどのようなことをされているのですか?

主にAI・IoT・各種センサーを活用したデジタル分析によって、廃棄物の構成を解析しています。これは従来の「分別」とは異なり、水素化処理に適したグルーピングを行うことが目的です。
完全に分別するのではなく、水素化処理に適したバランスで廃棄物を分類・投入することで、効率的な処理を実現しようとしています。これができれば、リサイクル不可能な廃棄物にも価値が生まれるのです。

社会課題へのアプローチ

この取り組みで解決されようとしているのは、どのような社会課題ですか?

人口減少・税収減・地方の産業衰退といった日本の構造的な課題に対し、私たちのモデルが貢献できると考えています。ゴミ処理にかかるコストを下げることができれば、自治体の財政にも余裕が生まれますし、水素エネルギーを核にした地域創生も可能です。
さらに、日本だけでなく、いまだ埋立処理をしている海外にも展開することで、大きなビジネスチャンスに繋がると思っています。

企業誘致の材料としてはどんな魅力がありますか?

IoTデバイスによってゴミのトレーサビリティが実現できる点です。企業にとって、自社の廃棄物がどれだけサステナブルに処理されたかをデータとエビデンスで可視化できるのは非常に大きなメリットです。
これが企業価値やブランディングにも有効だと思っています。

アパレル以外のゴミにも展開できるのですか?

可能です!テキスタイルの水素化に成功したことで、食品残渣・タイヤ・建設廃材など、有機性廃棄物全般への応用が見えてきました。そこで2023年に親会社から独立し、現在のBIOTECHWORKS-H2を設立しました。

私たち一般の人の生活には、どう影響してきますか?

今でもリサイクル可能なものはもっと分別してリサイクルすべきです。ただ、どうしてもリサイクルできないものもあります。そういったものを私たちが処理し、地域のエネルギーに変える。
これにより、「自分たちの出したゴミがエネルギーとして戻ってくる」という意識改革につながると考えています。

応用例として面白いアイデアがあれば教えてください。

例えば、スポーツチームの古いグッズを回収して再資源化し、スタジアムの電力として活用することで、ファンとの一体感を高めることができます。
テーマパークのような施設でも、ゴミがパレードやお城のライトアップに使われていると知れば、来場者にとって一段と感動が増すはずです。

起業の歩みと今後の展望

事業化するにあたり、困難だったことは?

やはり技術パートナー探しですね。当初は国内大手企業を回りましたが、スタートアップとの協業文化が乏しく、前向きな話はなかなか進みませんでした。
そこでアメリカに渡り、LinkedInでアポイントを取り、何度も商談を重ねてようやく技術パートナーと出会いました。コロナ禍での渡航・隔離・ワクチン接種など困難も多かったですが、すべてを乗り越えてようやく現在の体制が整いました。

独自技術や特許はあるのでしょうか?

現在、特許の出願準備中です。単一の特許ではなく、複数のパーツごとに分けて、20件程度の出願を想定しています。

ピッチイベントはいかがでしたか?

ちょうど前週に10分間の英語ピッチを経験していて、今回は5分間の日本語ピッチだったので、実はリラックスして臨めました。
審査員の方々が「レベルが上がっている」とおっしゃっていて、純粋に嬉しかったです。会場の方々もうなずきながら聞いてくださっていて、とても手応えを感じたプレゼンでした。

ピッチ中の仁谷さん。

優勝によって何か変化はありましたか?

著名なメンターの方々とお話する機会をいただいたのが大きかったです。資金調達のノウハウやスタートアップ運営について多くの知見をいただきました。
また、前回の優勝者との交流も刺激になりました。貴重なつながりを得られたことに感謝しています。

今後の展望について教えてください。

現在は、前処理工程と水素化工程をつなぐパイロットプラントの建設を目指して動いています。そこで実証実験を行い、商用フェーズに移行したい。
将来的には、自治体のゴミ処理施設の代替手段として導入され、100t、200t規模のプラントで運用されるような世界を目指しています。有機性廃棄物全般の水素化を最終目標としています。

ありがとうございます!最後にメッセージをお願いします。

BIOTECKWORKS-H2では、中高生向けのキャリア・サステナブル学習プログラムを実施しています。未来を担う若い世代が、地球規模の問題を自分ごととして捉え、取り組むための視点を得られるような機会にしたいと考えています。
また、今回のピッチでご縁ができたコクヨさんのような企業と協業し、廃棄家具やオフィス用品の再資源化を通して、廃棄物から価値を生み出す仕組みやブランディング支援にも繋げていけたらと思っています。

BIOTECKWORKS-H2さんの会社やプロジェクト内容について、もっと知りたい!と思った方に向け、月に2回ワークショップも開催されているとのこと。気になった方はぜひ、オフィシャルサイトhttps://biotechworks.co.jp/へどうぞ。今後の展開にも、ぜひご注目ください!