守屋実さんに聞きました！新規事業を生み出すときの心得とは？ ― モヴ百景　其の17

だって店長から声かけられたら、来いってことでしょ。笑。いまね、新規で「出資して」とか「事業計画見て」とかが、だいたい年間で200件くらいくる。

ぜんぶ会ってたらね。今つきあってる人と何もできなくなるじゃない？
だから資料を送ってもらって、ほんとに気になったら返事するけど、基本的には難しいから「ごめんなさい」って最初に謝っておく。嫌われたらいやだから、むちゃくちゃ怖々と謝ってる。笑。

それに、相手の立場に立つと、すごい頑張って事業計画を詰めて、礼を尽くして送ってるのに会ってもくれないって「なんだよ、30分も作れないのか」って思うじゃない。でもこっちからすると、30×200なんだよね、という...。

いちおうそれ用に空き時間をつくってたりもするし...あとはもう寝なきゃいいじゃない。だって会いたいからね。飲みたいときは徹夜で飲むでしょ？一緒だよね。笑。

それでいうと事業のアイデアって考えたことはなくって。

なにか１個の事業をやってると、その事業のすぐそばに、もう１個くらいやった方がいい何かに出会うんだよね。でも、今はこの事業をやってるから新たに出会ったそれはできないでしょ？そうすると、しかかり在庫１って、在庫が増えるのね。

で、いくつもそういうのをやってると、しかかり在庫だらけになるんだよ。むしろやってないことだらけで、誰かこれやってよっていつも思ってるから、基本的には事業のアイデアとかは考えたことありませんっていうのが結論なんです。

「入れて！」っていう。やりたいことに近しい人に会うと、「これだよね！わかるわ～」ってなって、もう速攻で連絡を取ってブレストさせてもらうの。「俺が作りたい未来はこういう感じで～」「いや僕はこう思ってるんですよ」って話して、意見が合うようだったらお願いをする。

しょっちゅう、しょっちゅう。やりたいことにヒットしたら、基本的には自分からいう。例えば、あるピッチ大会で出会ったMagic Shieldsという床材屋さんは、普段は硬いんだけど、転んだ時だけ柔らかくなるっていう、ほぼドラえもんみたいな床材を作ってるんだよね。

メカニカルメタマテリアルっていうやつで、基本的にゴムの構造でできているんだけど、特定の力が加わった時にその構造が壊れてぐにゃっとなって、もう一回元に戻るっていう、漢字で書くと変性合成ってやつ。

でね、じいちゃんとかばあちゃんは、年間で100万人くらい転んでる。うち25万人くらいが重篤な骨折で、さらにそのうち5万人くらいが亡くなってる。差分の20万人はどうなっているかというと、じつは寝たきりになっちゃう人もいる。本人は超辛いし、まわりの人も辛い、国は税金が出ていくよね。

もともと病院の事業もやっているから、転ぶ瞬間だけ床が柔らかくなればいいのにって思ってたんだけど、そうしたら作ってるっていう人が現れて。もう会って5分で「参画させて」ってお願いした。だから、基本的に自分からラブコールする人なんです。

もしかして『どうしても、溝が埋まらない』の人？実話なんだよね〜。とある家電製造メーカーでの話なんだけど。

実際にある会社さんから「うちの社員が失礼をして申し訳ございませんでした」って連絡がきたよ。笑。いやいや違うから、御社じゃないからっていったんだけど。

あるよ...ある...。まず基本的に大企業って、新しい事業を生みにくくてしょうがないよね。「我が社の強みは活かせてるのか」とか、「必ず儲かるのか」みたいなことを必ずいうじゃない。

新規事業なんだから、未来価値に向けた投資（リスクとリターン）のはずなのに、「ぜったい外すな」とか、「今期の通期予算の達成の方が大事」とか。未来を見てないじゃん、と。

そういうのを「本業の汚染」といってるんだけど、事業が生まれた後も汚染は続くよねってことで、この間書いたのが「続・本業の汚染」。

その会社はね、買収したことはあっても、自社事業を切り出すってことは経験がなくて。「カーブアウト」することについて、もう延々と打ち合わせをしてたの。そしたらね、期（中計）をまたいじゃったの。

中計をまたいだから、人事が変わって、上司の上司と財務が変わっちゃったの。 そしたら、上司の上司が「俺は聞いてない」って。財務の責任者も、カーブアウトする時の資産計算を「この計算式はいかがなものか」っていいはじめて。

でしょ？でも上司の上司と財務の責任者が「いかがなものか」っていったからフルブレーキだよね。調子もよくて、すごい勢いで走ってたのにバチン！って急に止まるとだいたい事故るでしょ。その新規事業のメンバーみんな、ぶちぶち心が切れちゃったわけよ。ひどいよね、でもあるあるなんだよね。

あ、お酒は飲まないから。もう５年...６年くらい飲んでない。

自分の会社が上場しはじめたから。足元５年で、自分の関係している会社が５社上場してるのね。ほら上場するタイミングって、トラブル起こしちゃいけないじゃん。で、俺、酒癖が悪い。

喧嘩とか暴力はしないよ。ただ、お酒と女性のセットに...信っじられないくらい弱いの。飲んだ次の日に記憶にないお店の領収書があって、どうもフルーツとかボトルとかいろいろ入れたみたいなんだけど...俺はいったい誰と何を飲んだんだ？みたいな。
一緒に行った人たちに聞いてみると、すこぶる上機嫌でいろいろやらかしてたらしい。ほぼ覚えてないんだけど。

ストレス発散っていうと語弊があるんだけど、そもそもスタートアップとの打ち合わせは、好きでやってることだから。飲みに行きたいですか？スタートアップと打ち合わせしたいですか？っていわれたら、打ち合わせする方が楽しいと思っちゃう。

自分の中で、打ち合わせは作戦会議だと思ってて。労働ではなくて活動だと思ってるから。いい作戦を立てられて、実行して、突破口が拓けたりすると、いろいろ大変だったこととか一瞬でぜんぶ吹き飛んで、何度でもいつまででも没頭してられるんですよね。

うん、生み出せるよ！もし生み出せなかったら、クレームは著者じゃなく出版社にいってね。文責は僕じゃない 笑。

でもこれさ高いでしょ？

出版社の方が、「法律の専門書も医学の専門書も高いでしょ。これは新規事業の専門書だから2万円でいこう」といったんだけど、「いやいや高いんじゃない？2万はきつくない？」っていって。とりあえず1万5000円は切ろうよってひよったの。笑。

おかげさまでめちゃくちゃ売れてまして。発売前にベストセラーで、発売日から1位だったし、5日で重版かかったんですよ。